外国において商標を付した商品を販売する場合、商品を輸出する場合、サービスを提供する場合などに、その国において商標権を取得することをお勧めいたします。商標権を有することにより第三者による模倣を防止すると共に、商標の模倣により売り上げが減少したなどの損害にあったときには損害賠償請求ができる国が多いからです。
日本で商標権を有し、若しくは商標登録出願をしている場合であり、且つ多数の外国(2カ国以上など)において商標権が必要な場合には、商標に関する国際条約であるマドリッド協定議定書(マドプロ)を利用して国際商標登録出願をすることにより、1の手続で多数の指定国に対しての商標出願を同時に行うことができ、非常に手続きが簡易です。なお、マドプロにおける手続きの流れはこちらをご参照ください。
マドプロ出願を利用することによる利点は以下のようになります。
- 1つの出願で複数国に出願できる
願書において指定国を指定することで、1の出願で各指定国に出願したものとして扱われます。このため、各指定国毎に出願手続きをする必要性がなく、出願費用を大幅に削減することができます。また、各指定国から拒絶通報(拒絶理由の通知)がない場合には現地代理人を介さずにその指定国で商標権が登録されるため、現地代理人費用が発生せず、費用を大幅に削減することができます。なお、2017年現在マドプロ加盟国数は98カ国です。
- 商標権の更新管理が容易
国際出願日から10年経過するなどして国際商標登録を更新する場合には、国際登録を1つ更新すれば、複数の指定国毎に更新登録する必要性がなくなり、全ての指定国で更新がなされます。従って、国際商標登録においては更新時の手続が極めて簡単です。
- 費用を大幅に削減できる
各国の現地代理人を介して、それぞれの指定国において直接出願を行うことにより商標権を取得することもできますが、この場合には当然に高額の現地代理人費用が発生します。国際商標登録出願では、上記のように現地代理人費用が発生しないで登録になるケースが多々あるため、特に複数の指定国がある場合には極めて有効です。
マドプロ出願をする場合の費用としては、特許庁及びWIPO(国際事務局)に支払う公的費用と、日本の弁理士費用が発生します。公的費用としては、国際事務局WIPOに支払う基本手数料(商標白黒653スイスフラン(CHF)、商標カラー903CHF)、指定国となる各国が要求する場合の個別手数料、付加手数料100CHF(1カ国毎、個別手数料支払い国を除く)、3類を超える1類毎に支払う追加手数料100CHFがあります。(※2017年4月現在1CHFは約110円です)
- マドプロ出願の弊所弁理士報酬
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1区分(1類) |
2区分(2類) |
3区分(3類) |
1ヵ国 |
70,000円 |
75,000円 |
80,000円 |
2ヵ国 |
75,000円 |
80,000円 |
85,000円 |
3ヵ国 |
80,000円 |
85,000円 |
90,000円 |
※以下、同様に国数、区分数が増えるごとに増額します。
※アメリカを指定する場合、追加書類が必要なため上記費用に1万円をプラスします。
- (例)マドプロ出願で3カ国(指定国:アメリカ、EU、中国)、一区分で出願した場合の費用概算
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費用 |
WIPO事務手数料 |
71,830円(653CHF) |
日本特許庁印紙代 |
9,000円 |
EU個別手数料 |
98,670円(1類897CHF、2類目55CHF、それ以降164CHF加算) |
米国個別手数料 |
42,680円(1類毎に388CHF) |
中国個別手数料 |
27,390円(1類まで249CHF、それ以降125CHF) |
弊所手数料 |
90,000円+税 |
合計 |
346,770円 |
※上記計算は1CHF=110円(2017.4現在)として計算しております。
※出願の種類、指定国数、指定国の種類によって費用の計算が必要です。
※指定国で拒絶された場合の拒絶通報により発生する現地代理人費用は含んでおりません。
なお、マドプロ出願においては、国際事務局から各指定国に通報があった後に各指定国毎に商標出願が審査されます。そして、各指定国毎において拒絶理由があった場合には拒絶の通報がなされます。この場合には、指定国現地代理人を選定して、拒絶を解消するための手続を開始する必要がありますので現地代理人費用が発生してきます。この点、ご留意ください。また、以下に、出願後に発生する可能性のある主な費用を例示します。ご参照ください。
- 拒絶通報を受けた場合の現地代理人費用 実費
- 拒絶通報を受けた場合(中間手続)の弊所作業手数料 1~3万円(作業量による)
- 海外への送金手数料 5,000円/毎
- 商標権更新時の弊所手数料 30,000円
- 商標権更新時の官費 実費
商標の権利化を希望する外国が少ない場合(1か国などの場合)には、外国の現地代理人を介して各国に直接出願することも可能です。また、この場合、日本の商標出願日から6か月以内であれば、外国出願をする際にパリ条約等に基づく優先権を主張することにより、出願日が実際の出願日ではなく日本の出願日を基準に審査されます。これは、特に、権利化を希望する国が先願主義を採用する外国である場合には有効です。⇒この場合の手続の流れはこちらをご参照下さい。
また、マドプロに加盟していない国(台湾、インドネシア、タイ、マレーシアなど、2017.4現在)に出願する場合にも直接出願は有効です。さらに、各国の現地代理人を通じて出願をするので拒絶通報などが出た場合には現地での法律に基づいて適切な対応が期待できます。
外国への直接出願の場合に発生する主な費用は以下の通りです。お客様より商標権が必要な外国をご教示頂ければ、出願前に現地代理人費用をも含めた概算費用をご提示致します。その点はご安心ください。外国商標を取得する際には是非弊所のリーズナブルなサービスをご活用ください。
- 弊所手数料 70,000円/国毎
- 現地代理人費用 実費
- 中間手続の弊所作業手数料 1~3万円(作業量による)
- 海外への送金手数料 5,000円/毎
少々専門的な話となりますが、米国は商標に関して使用主義を採用しております(一方、日本などは基本的に登録により権利が発生する登録主義を採用)。
従いまして、米国では商標権を取得できただけでは排他権が生じないため実効性がなく、実際に使用していることを証明するために使用証拠を提出する必要性があります。この使用証拠は簡易なもので良く、例えば、商標の付された実際の商品の写真、サービスの場合にはロゴの付されたウェブサイトなどです。
また、米国国内登録の日から5~6年の間に、登録商標の使用をしていることの宣誓供述書(affidavit)を提出する義務があるなど日本とは異なる米国特有の制度がございますので特に注意が必要です。相談は無料です。マドプロに関して経験を有する弊所の弁理士にお気軽にご相談ください。